独特の個性を持ったお店が軒を連ねる街、西荻窪。本書は西荻で「音羽館」という古本屋を14年間営む著者が、店の歴史や商売の実際について語り下ろしたものだ。
 著者は店を作る際、古本屋に代々根付く「店がきれいである必要はない」という価値観を見直し、棚作りなど随所に工夫を凝らしたと語る。例えば「女子棚」。料理本や街歩きなどの本をまとめた棚のことで、最近では名前に反して中高年男性の売り上げが伸びているという。ほかにも100円均一本の値段シールに「ヨ、キ、ミ、セ、サ、カ、エ、ル」(良き店栄える)の一文字をつけ半月ごとに文字を変えて売れ行きを見る、漫画家や編集者などモノ作り関係者が多い西荻という街の客層に合わせて本を並べる、なるべく異なる色同士の本を並べて躍動感を出す、など独自の工夫が語られ興味深い。
 穂村弘や大竹昭子、岡崎武志ら作家や元店員らがエッセイを寄せている。読了後に店に足を運べば、エッセイでも証言される著者の人当たりの良さや、棚の魅力を実感するはずだ。

週刊朝日 2013年11月22日号