学生ではなく未婚で無業、家族以外に人付き合いがない──社会の中で孤立(ひきこもり)状態にあるそうした人々を専門用語で「SNEP(スネップ)」という。本書は、ひきこもり問題の研究者と現場支援に関わるNPO法人の理事が、SNEPについてまとめたものだ。
 なじみのない言葉だが、事例を読むとSNEPという存在がぐっと身近に感じられる。公務員試験に6年連続で不採用となり、実家でひきこもるようになった青年。精神障害を患い私大職員を退職、実家で無業と契約社員などの仕事を繰り返す女性。SNEP増加の背景には、雇用の流動化にともない戦後の日本社会におけるつながりの中核を担った「学校・企業・家族」という三位一体モデルの崩壊がある。
 事例は総じて、誰しもが最初からSNEPを望んでいた訳ではなく、ふとした失敗をきっかけに孤立を余儀なくされる現実を示唆する。孤立・無業が他人事の問題ではないことに気づけば、SNEPを「何とかしなければならない人たち」ではなく「社会のあり方について考えるきっかけ」と捉えるべきという著者らの指摘は重く響く。

週刊朝日 2013年10月25日号