子ども向けの原子力教育ツールはバイアスがかかったものが多い。昨年まで稼働していた原子力教育支援情報提供サイト「あとみん」(主催/文科省。運営/日本原子力文化振興財団。2012年3月末で閉鎖)など、原発の安全PRが目的であることが見え見えだった。福島第一原発の事故後、この種のキャンペーンはしばらく鳴りをひそめていたが、最近また復活しつつある。
 なので「科学漫画 サバイバルシリーズ」36巻『原子力のサバイバル〈1〉』も半ば疑心暗鬼で読みはじめた。少年ジオ、発明好きの科学者ノウ博士、博士の助手のケイらを中心に展開する人気シリーズ。今回、博士が発明したのは人間が乗って操作する耐放射線作業用の巨大ロボット、アインシュタイン号だ。一行はロボットのお披露目のためS島の放射線研究所にやってきたが、実演の最中に大地震と津波が島を襲い、原子力発電所でも水蒸気漏れが。キャーッ!
 物語はここで終わり。その後の展開は「次号に続く」らしいので、この段階で評価はできない。ただ、放射性物質に対して異様に呑気なノウ博士と、異様に心配性のケイの対比がこの巻の見どころと見た。「心配いらん。放射線はもともと自然界にあるものなんじゃ」と語る博士に「博士、それは自然放射線でしょ。別の問題ですよ」と突っ込むケイ。博士の失敗を知るジオの懸念に対しても「確認したけど心配だよ。何せ、放射能だからな! 何で博士は自信満々でいられるんだか……」。
 こういうツッコミ役を用意しただけでもだいぶマシ。科学者が微妙にバカに描かれているのが現実とかぶって見える。じつはこれ、韓国の漫画の翻訳版なのだ。福島を経験した日本とはやや異なる距離感が保たれているのはそのせいだろう。
 にしても、こんなロボットが現実には存在しない以上、一行がサバイバルに失敗してはじめて原子力への理解が深まるはずなのだ。はたして結末やいかに。ハッピーエンドでもバッドエンドでもこわいよな。

週刊朝日 2013年10月4日号

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