2016年のローラーダービー世界大会の日米戦
2016年のローラーダービー世界大会の日米戦

 東京都大田区で八百屋を営み、自分は飲まないのに宴会の計画を立てる担当になるとか、頼まれたら何でも引き受けてきた彼の父のことを、この記事の取材中、何度も思い出した。それと昭和40年代初頭、その実家「八百光」の前の通りで安保反対のデモがあったときのことも。火炎瓶や石が投げられていたので商店街は戸板を閉めて収まるのを待っていた。小泉の父は外出中。さぞや不安だったろうに、母は「助けて」と戸板を叩くヘルメットを被った女性を、くぐり戸から中に引き入れて匿ったという。巻き込まれるかもしれないリスクがあったろうに……。

 小泉の人生を取材していると「損得抜き」「面倒見がいい」という言葉を何度も耳にしたが、そんな両親の下で育った人だからなぁ、という気がしてならない。面倒見の良い人、いたよなぁ……と懐かしくなり、人情、という言葉が頭に浮かぶということは、自分も含め、それがいかに減っているか、ということ。小泉が人を明るくするだけでなく、人を惹きつけ、国境を超えて人脈が豊かなのは、損得抜きの人情があるからで、人は本質的にそれを求めている、ということだろう。昭和の親父らしい、と思われても構わない。小泉は、その生き方で、大事なことを教えてくれる。(文中敬称略)

週刊朝日  2023年3月17日号

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