大津波におびただしい命がさらわれたというのに、まるで玉音放送時代の祖国防衛戦争なんて始めたから死屍累々。その荒涼の中を男は歩く。過去現在未来の並行世界を結んでメビウスの輪状になっているらしい鉄路沿いをとにかく、ここではないどこかへ。 男は、ただ歩く。個の意識を捨てられない。ガンバレ日本の集団ヒステリーに同化できない。それで男は群れから離れたのだ。流浪難民の、21世紀の「狂人日記」が本書である…

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