妊娠・出産から離婚、異国生活、子どもの思春期、親の介護と「自分記」を詩人の筆致で世に問い続けてきた著者。50代半ば過ぎの身体と暮らしを、軽妙かつ磊落(らいらく)に綴った。
閉経前後の自らの変化を「おもしろくてたまらない」と著者は言う。性愛、妊娠、子の反抗期などには、人生経験の浅さゆえに翻弄された。海千山千の「漢」(おんな、もしくはおばさんと読む)となった今、大抵の事には動じず、自分を突き放して心根の変化を分析する。たとえば初孫への関心と距離感。夫が旅行に出ていった後の途方もない解放感。容色の衰えを突き付けてくる美容院の鏡。同年代の女性なら、自分が肉体や感情にこうも振り回される理由が、ストンと腑に落ちる。
ふた親亡き後、親の家と遺品をひとり片付ける項が胸に迫る。10年近く、日米を往還しながら介護をし、死を見つめ続けてきた著者の集大成である。
2年間の同時進行で、閉経後には困難とされるダイエットに成功、というおまけまで付いた。カラダを張って成果を得る、まさしく軍記物なのであった。
週刊朝日 2013年3月29日号