日本の尖閣諸島の国有化以降、悪化する日中関係。中国への印象が悪化した人もいるだろうが、果たして中国を「中国」と一括りにできるのかというのが本書の出発点。日本ですら県民性の違いは大きいが、中国の人口は日本の10倍以上、国土は26倍。50以上の民族が住む。
本書では中国の31の省や直轄市、自治区ごとにその土地に住む人びとの気質や歴史、名物料理などを歯切れの良い文体で紹介する。北京や上海など大都市に対する歯に衣着せぬ語り口も小気味いいが、興味深いのは日本人に馴染みのない地域への言及。田舎ならではの心温まる小話もあるが、辛口な指摘やブラックジョークがやはり満載だ。例えば広西チワン族自治区。「標準語は通じないがオートバイ普及率は全国1位」「美男子率、美女率は最低レベル?」。貴州省に至っては「国内でも存在をほとんど忘れられている」。
手厳しい指摘も少なくないが、大手メーカーで中国を飛び回った著者が見聞きした話が多いだけに説得力は十分。単なる悪口満載の中国本とは一線を画す。
週刊朝日 2013年3月15日号