山田うどんは、埼玉県所沢市に本社・本店を置き、同県内を中心に関東一円に展開するうどんチェーン店。著者二人は、10代後半のとき山田と出会った。といっても、そこで提供されるのは安くて量が多いだけの普通のうどん。若い頃は重宝したが、環境の変化に伴い自然と足は遠のく。しかし50歳を過ぎて、昔と変わらぬ山田と偶然再会。山田は青春だったが、その一言では片付けられない“何か”が残る。居ても立ってもいられず、二人は勝手に「山田うどん再評価」に乗り出す。
山田の本社で社長と面会し、工場を見学し、国道50号線(北関東3県をまたぎ9店舗が配備された「山田ロード」)を走り抜ける。そうして、70年代に山田がロードサイドで店舗数を拡大したことで、そこに繁華街にはないカルチャーが生まれ、匿名的でリアルな「郊外」が形成されたといった興味深い見解を示していく。
いやはや、凡庸なローカルチェーンを一冊の本にしてしまうとは……いや、凡庸すぎるがゆえに、意識しなければ気づかない発見に溢れているのか。
週刊朝日 2013年1月25日号