本書は母娘問題の著作で知られるカウンセラーが、これまでの経験に基づき想定した架空の相談者(クライエント)の家族関係に関する相談をQ&A形式でまとめたものだ。
新聞やネット上の人生相談は巷に溢れているが、本書との違いは「責任の有無」にある。基本となるのは相談者と同じ目線に立ち、問題に見合った対処策を見いだすカウンセリングのスタンスだ。ある見方を前提に問いが作られた時点で既に答えは出ている、という視点を基本とする。著者の役割は問題を取り巻く状況を整理し、根底にある見方や気持ちを指摘すること。また、必要に応じて視点の転換を促すことにある。たとえば実の子がかわいく感じられないという母に対しては、本当の問題は子が母になつかないため生じる自尊心の傷つきにあると指摘。背景に横たわる「子どもを平等に愛せよ」という一般的な見方を捨て、視野を広げることを勧める。
明確な語り口には、ハッとさせられる部分も多い。自分の問題を重ねれば、著者の回答がより説得的に響くだろう。
週刊朝日 2012年11月23日号