昨年、プロ野球中日ドラゴンズの浅尾拓也投手はセ・リーグの最優秀選手に輝いた。彼は花形の先発投手でもなく試合を締めくくる抑え投手でもない。試合の中盤から登板して、抑えにつなぐ中継ぎ投手だ。投手分業制の確立で中継ぎの地位が向上したことを印象づけたが、一昔前まで中継ぎは、投げても投げても記録が残らず、恵まれないポジションだった。
 80年代に阪神タイガースを支えた福間納は313試合連続してベンチに入った。元中日の鹿島忠は雨が降ろうとも毎日、肩をつくった。元ダイエーの吉田豊彦は先発から中継ぎに格下げとなったが、腐らずに投げ続け、セットアッパーとして復活した。
 本書に登場する9人の中継ぎは年俸や記録の点では不遇だったのかもしれない。連投に次ぐ連投で選手生命を縮めた人もいるだろう。ただ、彼らは不思議に現在は解説者やコーチの職を得ている。見ている人は見ているのだ。目の前の仕事を黙々と全うすることが大切だと改めて気付かされる一冊。

週刊朝日 2012年10月12日号