■法だけ追いついてない
そんな話を小野さんがメンバーに共有すると、アイデアがさらに進化した。女性パートナーと子育て中の青山真侑さんは、小学生の息子に日本で同性婚が実現しない理由を尋ねられ、「政治家の人たちは、うちみたいな家族がたくさんいることを知らないのかもしれない。岸田総理にお手紙を書いたらいいかもね」と答えた。すると息子は「僕も書きたい」と乗り気に。そこで岸田首相に手紙を書くプロジェクトを立ち上げて呼びかけを始めたところ、仲間たちやその家族が次々と参加した。
冒頭の手紙を書いた女の子も、母親に「書いてみる?」と聞かれてすぐに応じた。「思いついたことをふつうに書いたよ。かんたんだった」と話す。
小学1年生の妹も、こんな手紙を書いた。
<ママたちは(中略)わたしとおねえちゃんをしあわせにまいにちをおくれるように、がんばってくれます。ママたちがけっこんできたらわたしはもうしあわせです>
どんな気持ちで書いたのかを尋ねると、「たまには子どもから大人をうれしくさせたい」と思ったという。ふたりとも岸田首相に手紙を書くことに、全く気負いはなかった様子だ。
2人の娘を育てるaiさんは、同性婚の法整備が進まない現状へのもどかしさを語る。
「我が家の子どもたちは、お友達に『ママがふたりいるよ』と話して、ふつうに受け入れられている。私たちにもママ友やパパ友がいて地域にもとけ込んでいるのに、法的な権利だけが実態に追いついていません。同性婚が法制化されたら、子どもをもつ選択をする同性カップルは今よりさらに増えるはず」
パートナーのマリさんも、「『社会が変わってしまう』と言うけれど、私たちは今も当たり前に暮らしており、社会は既に変わっている」
と指摘する。
熊本県でふたりの母親と兄と暮らす小学3年生の女の子は、こんな手紙を書いた。
<わたしは(中略)がっこうで、『おかあさんたちけっこんできてないじゃん』といわれたことがあります。ちょっとだけなきそうになりました。(中略)学校の先生もきんじょのひともみとめてます。(同性婚を)みとめてくれたら、みんなにっこりしますよ!>
■同性婚への切実な理由
文章の下には、にこにこと笑う4人家族のイラストが添えられている。娘が手紙を書いたときのことを、母親のクミさんが話してくれた。