性的少数者や同性婚をめぐる前首相秘書官の差別発言をきっかけに岸田文雄首相に手紙を書くプロジェクトが始まった。LGBTQ家族の子どもたちが素朴でストレートな思いをつづっている。AERA 2023年3月13日号より紹介する。
* * *
<なんで女どうしはけっこんできないのですか? ただけっこんをするだけで、それいがいがかわるわけじゃないのに。ママがふたりの家だけどわたしもしあわせだし、ねこも犬もしあわせそうにいつもねてるし、ごはんもばくばく食べてます>
女性同士のカップルを親にもつ、東京都在住の小学3年生の女の子が岸田文雄首相に宛てて書いた手紙だ。直球の問いかけに、「同性婚、なんでダメなんだろうね?」とこちらも首をひねってしまう。
この手紙が書かれたきっかけは、岸田首相側近による差別発言だった。2月初め、首相が同性婚の法制化について「社会が変わってしまう課題」と述べた2日後、首相秘書官だった荒井勝喜氏は「(性的少数者が)隣に住んでいるのも嫌だ」と露骨な差別を口にした。メディアでも大きく報じられ、当事者のみならず多くの国民から、怒りや失望の声があがった。
■きちんと言い返そう
そこで始まったのが、冒頭の手紙を生んだ「#岸田総理に手紙を書こう!プロジェクト」だった。呼びかけたのは子育てをするLGBTQなど性的少数者の団体「にじいろかぞく」だ。共同代表のひとりである小野春さんは、プロジェクトが立ち上がった経緯をこう説明する。
「私は同性パートナーと3人の子を育ててきましたが、あの発言には衝撃を受けました。このまま言われっぱなしではメンタルによくないから、きちんと言い返そうと思ったんです」
小野さんはまず岸田首相の事務所に電話をかけ、件(くだん)の発言でショックを受けたことや、直接会ってほしい旨を職員に伝えた。以前にも同性婚に賛同する国会議員を増やすため、地元の議員に手紙を書いたことがあったので、迷いはなかった。官邸ホームページの意見フォームからも同様のメッセージを送り、手紙も郵送したところ、気持ちがちょっと上向いた。SNSで声を発するだけではなかなか手ごたえが感じられないが、「正しい手順を踏んで、伝えるべき相手に直接メッセージを送ってみたら、意外とすっきりした」ことに気がついた。