震災以来ひさしぶりにイケメンさんに会った。震災直後は間引き運転やら大規模停電のおそれやら余震やらで、会おうとしても会うことがかなわなかったのだ。
離れている時は、ずいぶん心細くて、
「絶対また会えるって約束して、お願い......!」
とかいう言葉を恥ずかしげもなく送信していたし、向こうは向こうで、
「絶対また会いに行くから、必ず生きてて」
とかいう熱い言葉で返してきた。まるでドラマのヒロインにでもなかったかのような気分だった。
震災後3週間以上経ってやっとイケメンさんに再会できた。会えたらうれしくて抱きついたり泣いたりするのではと自分を案じていたけれどそんなこともなく、私たちはただ、いつものように歩き始めた。彼は少し痩せていて、私たちは前よりもふざけたことは言わなくなった。でもただ一緒にいるだけで、とても安心できた。こんな気持ちになったのは、私だけかもしれないけれど。
彼の口数が少なくなってきたので、おなかがすいているのだろうとカフェでハンバーグをごちそうした。彼はチーズとポテトがたっぷり載った二枚重ねのボリュームたっぷりの1050円のハンバーグセットをぺろりと平らげた。見ていた私は胸もおなかもいっぱいになってしまい、普通サイズのものも半分も食べられなかった。食事をしているときに余震が来たけれど、彼と一緒だと、全然こわくなかった。
結局ちょっとお散歩してお食事したら帰る時間になってしまった。そして私たちは次の約束をした。ああ、次の約束ができるって、なんて素晴らしいのだろう!
そして私たちは最後まで「また会えてうれしい」なんてことは、何ひとつ言わなかった。あんなに熱烈なメールを送りあったはずなのに、いざ相手を前にすると言えないものである。でも、向こうの態度でなんとなく伝わったから、よいのである。
節電で随分暗くなった東京の街並みを見つめながら私は彼と交わした目線を思い返しながら口もとをほころばせていた。私の心の中にも、ほのかな明かりが灯った気がした。
いろんなことが世の中で起きていて、時には気持ちが沈むこともあるけれど、再会という希望を胸に、これからも毎日を過ごしていこうと思う。