「AVの問題点は、経験がなくても、男女が異なることをわかったような気になってしまうことです。男性ってこういうものなんだ、女性とはこういうものなんだと、大人がつくったステレオタイプにのみ込まれてしまう危険性はあります」
性への関心が低下する一方で、同協会の調査では、「性交に愛情が必要」と考える割合が、特に女子高校生で増加している。このため、最近の女子は、何よりも恋愛に高い価値を見いだす、「純愛志向」になってきた一方、男子はそれほどでもない。
石川准教授によると、以前の「純愛」は、結婚してから性交をする貞操観念にもとづく純潔主義だったが、今は性交も恋愛の手順の一つとしてとらえている傾向にある。そのため、「愛がなければセックスしてはいけない」と考えると同時に、「愛があればセックスをするのが当然」という価値観が生まれているのだという。
「純愛志向」の女性はどんなセックスをしているのだろう。交際相手に言われて、避妊薬のピルを服用しているというOL、D子さん(26)に話を聞いた。
「彼は『気持ちよくないから』と言ってコンドームをつけてくれません。でも、彼を好きなので断れないし、彼が気持ちよくなってくれればと思って我慢しています。彼は口でしかイケないらしく、最後はお口でします。毎回だから、嫌なんですが、嫌われるのが怖くて言えません」
純愛志向の裏には、D子さんのような女性がたくさんいる。赤枝六本木診療所の赤枝恒雄院長によれば、中絶する女性の多くがコンドームをつけずにセックスをしているという。
「その理由のほとんどが、『彼氏がつけてくれなかった』です。ちゃんと言わなきゃダメだと言っても、『つけないほうが気持ちいいって彼が言った』と言う。ひどいのは、『他の子とする時はつけているけど、おまえは特別だからつけない』と言う男。それを彼女たちは信じてしまうんです」
体よりも心に重きを置く純愛志向の女性と、問題を抱えるが相手に相談できない男性。今後、若者の性はどこへ向かうのだろうか。
「努力が実を結ばないという社会背景の中、純愛志向の多くは"運命"を信じている。しかし、それを信じるあまり、努力は無意味と感じてしまい、ハナから努力しようとしないのは問題。さらに、男女の価値観が固定化されてしまうと、今後、ますます男女間のミスマッチは多くなるでしょう」(石川准教授)
"性の氷河期"はまだ終わらないようだ--。