■相手の記憶に残す「捨」の意識
伝えたいものに集中、他はバッサリ落とす、という考えは写真も同じです。目に映るものをただ漠然と写真におさめるより、自分が撮りたいと思ったものや人にぐっと寄ったほうがメッセージははっきり伝わります。
「夕日に照らされてやさしく光る江の島」を撮りたいならそれだけでいいし、「夕暮れの中、ガタゴト走る江ノ電」を写真におさめたいならズームして他の要素は入れない。あれも素敵これも好きと欲張ると、ぼんやりとした写真になってしまいます。
写真でも、トークでも、自分は何を伝えたいのか、そのためには何が必要で、何が不要か。
とくに、取捨選択の「捨」を意識すると、大事にしたい内容が鮮やかに残ります。心配になって「これも言わなきゃ」と足したくなるところをぐっと我慢。無駄な言葉が削ぎ落とされて、内容が薄まらずに伝わります。
■腹5分目で一旦ストップ
普段から話が長いと自覚している人は、「腹5分目くらいでいったんストップ」と心得ておけば、まず悪い結果にはなりません。
一昔前の朝礼ではおなじみだった校長先生の話、結婚式で乾杯をする前のあいさつに象徴されますが、大好きな人以外の長い話は誰もがうんざりします。とくに、ドラマや映画を倍速で見たり、動画もどんどん短いサイズに編集されたりしている時代、延々と同じ話を続けること自体、相手の大切な時間を奪ってしまう残念な行為です。
どんなに伝えたいことがあっても、相手に不快な思いをさせてしまっては、話の内容自体を受け取ってもらえませんしね。
話したいことが10あっても、いっぺんに「10」すべて言おうとしないこと。
相手と時間を分かち合うわけですから、半分も言えれば、その日は十分と考える。相手のための「スペース」をしっかり残しておくことは、話す人のマナーでもあり、大人のさりげないやさしさでもあります。
自分のための「あれもこれも」ではなく、相手のための「今日はこれぐらいで十分」が結局一番伝わります。
【ここまで聴いてくれたあなたへ】
あれもこれもと欲張るより、一番伝えたいことは?
(構成/小川由希子)