なぜラジオは3時間の生放送でも聞き続けられるのか? ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんですが、実は「もともと緊張しがちで人見知りで心配性」といいます。そんな秀島さんだからこそ見つけられた、誰でも再現できる「人が聞き入ってしまう会話のレシピ」を一冊に詰め込んだ『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、「話したいこと」より、「話さないこと」を意識することが大切な理由をご紹介します。
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■「量的丁寧さ」のワナ
「ラジオって、聞く人それぞれの想像に託す、委ねるみたいな部分があったほうがいい。なんでも細かく説明すると、かえって伝わりづらくなるんじゃない?」
ついトークが長引いてしまった日の反省会で、ディレクターから言われた言葉です。「話す」が仕事ではありますが、私はどちらかというと「説明しすぎ」のきらいがあり、心地よいバランスって難しいと反省することが日々あります。
説明が足りないのも問題ですが、あまりに多くの情報を提供されても、聞き手にしてみたら処理しきれませんよね。
例えば、年の瀬の街の風景を描写するとき。
<夕暮れ時、神社の参道では『分散参拝』が呼びかけられたせいか、もうすでに破魔矢を持つ人を見かけました。駅から出てくる人の中には、お歳暮なのか、大きな包みを手に家路を急ぐ人が多くいました。それから商店街には、『もういくつ寝ると……』と『お正月』のメロディーが流れて……>
こんなふうに目にしたすべての事柄を説明してしまうと、全体がだらだらとした印象になり、何を伝えたいのかわかりづらくなってしまいます。「くどいなぁ」という印象も。
一方、何かひとつ、とくに印象に残った情景にスポットライトを当てて、一点集中で話したらどうなるでしょう。
<寒そうに家路を急ぐ70代ぐらいの男性の手には、熨斗のかかった一升瓶のお酒が2本。紐でキュッと2本くくりにされていて。きっとお歳暮でしょうね。ああ、粋な日本の師走だな、と年の瀬を感じました>
このように、言いたいことを絞ったほうが、頭の中に映像が浮かびやすいもの。伝えたい「年の瀬ならではの味わい深い情景」が強く印象に残ります。