特に、安倍元首相と林外相は、現在のそれぞれの区が重なるような区割り案だ。
県内の全体を含めて、だれがどの区から出るのか、だれかが比例に回るのか……など、山口県内にとどまらず、党全体にとっても頭を抱える問題だった。
「安倍さんがお亡くなりになったことで、山口の小選挙区1減問題は、混乱なくおさまると思ったんだけど、決してそうではなさそうだね」
ある自民党幹部がそう話す。
補欠選挙になれば、当然、自民党から安倍元首相の後継を出すことになる。しかし、誰が立候補するのかといえば、参院選が終わったばかりで、具体的な名前はまったく出ない。仮に補選で当選したとしても、その後の1減問題が待っている。
そこには、地元の意向も強く働く。安倍元首相に近い山口県議は、
「補欠選挙となれば、安倍先生の後継者を出さねばならない。補欠選挙とならなくとも、地元の思いは変わりません。安倍家が山口には必要です」
と話し、こう続ける。
「安倍先生はお子様はおられません。そこで、地元では、昭恵夫人に立候補していただきたいとの声がすでに出ている」
安倍元首相は、これまでマスコミのインタビューでも、
「妻は家庭内野党です」
と話すなど、昭恵さんは政治的な関心が強いと語っていた。
葬儀の際、昭恵さんはあいさつで、
「まだ政治家として、いろいろやりたかったことがあったと思います」
と語ったという。
安倍元首相の葬儀に出席した自民党幹部によれば、
「昭恵夫人の言葉を聞いて、山口4区が補欠選挙になれば昭恵夫人に出馬していただくしかないと思った。憲法改正など政治的に安倍さんがやり残したことも昭恵さんにお願いできれば、というのが正直な思いだ」
と党内でも「待望論」があることを明かした。
安倍元首相を支えてきた昭恵さんだが、ファーストレディーとして積極的に活動することでも知られている。これまでのファーストレディーよりも、とびぬけて知名度が高い。
そして、何より昭恵さんを推す背景には、安倍派の“お家事情”もある。