大学院により選考方法は異なるが、基本的には研究計画書、小論文、面接が課される。入試に数学を必要としない大学院も多い。赤田さんは「たとえば英語でTOEICなどのスコアの提出が求められる大学院があるので、スコアがあれば志望校の選択肢が増える」という。「データサイエンス」と名乗っていなくても、多くの大学院でデータサイエンスが学べる専攻・コースを新設する動きも目立つ。どのように志望校を選択すればいいのか。
「大学院は学部と違い、研究が主体です。指導教官がどのような研究を行っているかにより、学ぶ内容も決まってくる。自分が研究したい内容と合っているか、指導教官の専門分野もしっかり調べましょう」(赤田さん)
■社会科学に新たな知見 社会の課題に向き合う
データサイエンスを学ぶことができる学部・学科や大学院研究科の新設が活発化している。
一橋大学は23年度にソーシャル・データサイエンス学部(仮称)、ソーシャル・データサイエンス研究科(仮称)を開設予定だ。学部は70年ぶり、研究科は約25年ぶりの新設だ。設置の狙いをデータサイエンス研究センターの七丈直弘教授は次のように話す。
「本学は社会科学の総合大学ですが、データサイエンスを使ってアプローチすれば、新しい知見を得られる時代になりました。社会の課題を発見し、データ分析により解決できる人材を育てていくことが目的です」
学部では段階的に社会科学とデータサイエンスを修得できるカリキュラム編成で、大学院では入学前にプレ教育プログラムを提供。入学後は理論と実践の両方の科目を並行して学ぶという。
「学部で社会科学を専攻した人が大学院でデータサイエンスを学びたい、あるいはその逆、また理系学部出身者でも進学できるような入試とカリキュラムにする予定です」(七丈教授)
学部では幅広い知識・知見を備えたジェネラリストを、大学院ではさらに特定の分野に精通する、スペシャリストを育てたいという。
データサイエンスで日本はスタートで出遅れたが、大学では今、文理融合プログラムでの人材育成を進めている。あらゆる分野で、また、世界で活躍できる「データサイエンティスト」の輩出を期待したい。
(取材・文 柿崎明子)
※アエラムック『大学院・通信制大学2023』より