なぜラジオは3時間の生放送でも聞き続けられるのか? ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんですが、実は「もともと緊張しがちで人見知りで心配性」といいます。そんな秀島さんだからこそ見つけられた、誰でも再現できる「人が聞き入ってしまう会話のレシピ」を一冊に詰め込んだ『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、相手のモードに合わせた声に着替えるための、「声のワードローブ」の増やし方をご紹介します。
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■相手は、今、どんな状況?
「夜の番組だからゆったり落ち着いた感じで話そうか」
「平日の朝、出勤前や出勤中に聞いている人が多いから、明るくさわやかなトーンで」
新しく番組を立ち上げるとき、プロデューサーやディレクターと話し合い、「こんな感じの声でいきましょう」と声のイメージを共有します。番組によって声のトーンや話し方を変えるのは、ラジオDJにとって、最適なギアに入れ替えるようなこと。
ラジオは「ながら聞き」している人が多く、生活に密着したメディアです。ですから、「リスナーはどんな状況で聞いてくれているのかな?」と想像し、そこから“相手”に合わせて「声を着替える」ということをしています。
例えば、以前に担当していたときのJ-WAVE『GROOVE LINE』は平日16時半から20時の3時間半に及ぶ帯番組。そこで私が意識していたのは、「テンポよく、でもトゲトゲしくならず、やわらかく話す」。
パートナーのピストン西沢さんの自由奔放な話を、番組の進行上切り上げなきゃいけないときも、「ですよね、では次に行きますよ~」と言うべきことはきっぱり伝えながら、あくまでも笑顔の声で話題を区切ってみたり。
夕方は多くの人が気ぜわしくバタバタする時間帯です。日中仕事をしている人なら「退社時刻までに、ここまでは終わらせたい」と追い込みをかける頃ですし、家事ならば買い物に行って、夕飯を作って、片付けをして、お風呂を沸かして……と、てんてこ舞い状態。