そんなときラジオから聞こえてくる声が、あまりにもスローテンポだと、「ああ、今の気持ちとズレすぎ!」とまどろっこしく感じます。それはまるで、オチをなかなか言わない漫才のような、結論をもったいぶっているお偉いさんのような。ですから、話し方はもちろん、個々のトピックも曲も短めに終えて、テンポのよい番組作りを心がけていました。

 だからといって、話し方のトーンやテンションが高すぎたり、テンポが速すぎると、ただでさえ忙しい中、せっつかれているように感じる人もいます。声はあくまでもやさしく、かつ話題は引っ張らずサッパリと切り替えていく……緩急と剛柔のバランスも大切にしました。

 現在担当しているFMヨコハマ『SHONAN by the Sea』は日曜朝の番組なので、平日夕方の雰囲気とは大きく違ってきます。家でのんびり聞いている人が多いので、リラックスした雰囲気に水を差さないよう、声のトーンは少しだけ低めに。

 語りかけている相手は、まだ布団の中かもしれません。それとも、時間に追われず朝食を作りながら、家族とゆっくり過ごしながら、のんびり散歩しながら、かも。いずれにしても、低めで穏やかな声のほうが邪魔になりませんし、せき立てません。

 どんな番組であっても、まずはリスナーが「今この瞬間、何をしながら聞いてくれているのかな。自分なら……」と重ね合わせて想像することから始めます。日曜朝ならば、コーヒーの香りを楽しみながらくつろいだり、好きな音楽をかけてまどろんだり……。

 まるで同じ空間で自分もリスナーと一緒に過ごし、会話をしているような感覚になることで、ピッタリな声に着替えられるのです。

 どのような場面でもそうですが、「よし、いい仕事するぞー!」と思うあまり、張り切りすぎて空回りしてしまった経験はありませんか?

 原因は「自分が自分が」ばかりになってしまい、相手の状況を考えず突っ走ってしまうから。相手が見えていないと、こちらが頑張れば頑張るほど、相手が心地よいと感じる声からどんどん遠のいてしまいます。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?
次のページ
パートナーとの会話で大切なことは?