20~40代の人に多く、40代では3~4人に1人が筋腫をもっているといわれる子宮筋腫。しかし子宮筋腫があっても、手術して切除することが最善とは限らない。一方で、治療することで妊娠につながるメリットもある。症状やライフスタイルに応じ、自らにとって最善の選択をできることが望ましい。どのような理由で、どのような治療選択をするのか、実例も含めて医師に聞いた。
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子宮筋腫があっても、治療は不要な人も多い。今回取材した2人の医師は、治療選択のポイントを「症状」と「妊娠の希望」と話す。
筋腫が小さく症状がない場合は経過観察となるが、筋腫の成長のしかたは人それぞれで、そのまま閉経を迎える人も少なくないという。ただし、過多月経や月経痛など重い症状がある場合や、筋腫が大きくなった場合は治療を考える。東京女子医科大学病院産婦人科主任教授の田畑務医師はこう話す。
「筋腫が大きくなると、周囲の臓器や血管を圧迫して頻尿などの症状や、まれに血栓という血の塊が肺の血管に詰まる肺血栓塞栓症という命に関わる病気を起こすことがあるため、あまりに大きい場合は手術をすすめます」
29歳の女性は、過多月経や月経痛などの症状があり婦人科クリニックを受診したところ、多くの筋腫ができる「多発性子宮筋腫」と診断。田畑医師を紹介された。おなかの上から触れてわかるほど筋腫が大きくなっていたため、田畑医師は薬物療法で筋腫を小さくし、手術で切除することを提案した。女性は「将来子どもが欲しいので子宮は残したい」と希望し、田畑医師の提案どおり、GnRHa製剤という薬を投与する「偽閉経療法」を4カ月間おこなった上で、腹腔鏡で筋腫だけを切除する手術を施行した。
「未婚で将来妊娠を希望する若い女性は、このような治療を選択することが多いです。手術前に薬物療法をすることで筋腫が小さくなり、手術しやすくなるメリットがあります」(田畑医師)