一方、重い月経困難症などに苦しむ患者で、すでに子どもがいるなど、それ以上の妊娠を望まない場合は、子宮全摘術を選択することも。手術によりつらい症状から解放され、快適な生活を送れるようになる人がいる半面、子宮摘出により喪失感に襲われる女性もいる。板橋中央総合病院産婦人科主任部長の石田友彦医師はこう話す。
「子宮筋腫は、とらないと命に関わるという病気ではないので、『絶対』という治療法はありません。その分選択に迷うことも多く、医療機関や医師の方針に左右されることもあるでしょう。当院では、出産経験がなく子宮を残したいと希望する人には、年齢に関わらず筋腫だけを切除する核出術をおこないます」
田畑医師も「子宮全摘術は慎重に検討する」という。
「手術の難度としては、筋腫だけ切除するほうがやや難しく、出血や合併症が多いこともあるため、一般的には50歳前後になると子宮全摘術を選択することが多いでしょう。ただ、女性にとって子宮は大事なものですから、十分に相談して治療法を決めます」(田畑医師)
■手術以外の選択肢もある
手術を望まない人や、持病などにより手術ができない人には子宮動脈塞栓術(UAE)という選択肢もある。細い管(カテーテル)を足の付け根の動脈から挿入し、子宮動脈をふさいで筋腫への血流を止める治療だ(イラスト参照)。栄養が届かなくなるため筋腫が縮小し、症状の改善が期待できる。
「多くの人で筋腫が小さくなり、患者さんの満足度も高い治療だと思います。ただ、まれに子宮壊死や感染、無月経など合併症が起こることがあり、一般的に妊娠を希望する人にはおこないません」(石田医師)
また、閉経が近い場合は、偽閉経療法(逃げ込み療法)で症状を緩和しつつ、閉経まで乗り切る選択もある。
■筋腫切除後の妊娠にはリスクも
子宮筋腫の種類によっては不妊の原因になる可能性があり、妊娠を望み手術を選択する人もいる。