楽曲「大人のくせに」で佐野は〈ひとりだってずっと歩いていけるぜ/そうさ、英雄もファシストも/いらない〉と歌っている。アルバム『SOMEDAY』でブレイクした直後に単身渡米。2004年には自主レーベルを立ち上げるなど、常にインディペンデントな活動を続けてきた佐野は現在も、何にもおもねることなく、自由な音楽活動を続けている。
「バンド名にあるコヨーテという動物は、基本的には一匹で行動しているけれど、獲物を狩るときには群れになる。メンバーとも『これって俺たちのことじゃないか』と話しています。一人ひとりが自立した存在であり、必要なときに集団を成し、目的を達成する。それは僕自身の考え方でもあります」
「ソングライティングしているとき、ライブで演奏しているときは、自分が何歳かわからなくなる」と楽しそうに話す佐野元春。デビュー40周年を超えた現在も充実した活動を継続し、音楽シーンの最前線で活躍する彼は、常に“今”がピークなのだ。
「コンサートではいろいろな時代の曲を演奏しますが、歌うときはすべて今の曲なんですよね。80年代から僕の音楽を聴いてくれる人にとっては、良きノスタルジーを感じることもあるでしょう。ただ、ひとつ言っておきたいのは、僕らは懐かしむために演奏しているわけではないということ。佐野元春において、“懐かしの演奏会”はあり得ない。僕は今を生き抜くために、今の音楽をやっているんです」
(森 朋之)
佐野元春(さの・もとはる)/1956年東京都生まれ。1980年3月にシングル「アンジェリーナ」でデビュー。1982年のアルバム『SOMEDAY』が大ヒットとなる。1983年には単身渡米し、ヒップホップの要素を取り入れた意欲作『VISITORS』を制作。その後も「Young Bloods」「約束の橋」など数多くの名曲を生み出す。2009年からはTV番組『佐野元春のザ・ソングライターズ』(NHK)でホストを務めるなど、デビュー以来、第一線で活躍し続けている。現在は佐野元春&THE COYOTE BANDとしても活動。2022年は、3月に芸術選奨文部科学大臣賞を授賞されたほか、4月からは全国ツアーを開催、7月にはニューアルバムをリリースするなど、話題が続いている。