ある国立大学に設置されたカルト宗教勧誘に注意をうながす看板。画像の一部を加工しています(2014年)
ある国立大学に設置されたカルト宗教勧誘に注意をうながす看板。画像の一部を加工しています(2014年)
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安倍元首相の銃撃死亡事件で、山上徹也容疑者(41)の母親が入信している「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」に注目が集まっている。信者の家庭を崩壊させるほど献金をさせる実態が取り沙汰されているが、そもそもこうした「カルト」とも呼ばれる宗教団体は今、いかにして一般人を勧誘しているのか。専門家に取材した。

【写真】「偽装勧誘はしてない」と答えた教団の教祖はこちら

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「このイベント、怪しくないでしょうか」

 旧統一教会や、2006年に教祖による女性信者への性的暴行疑惑などが社会問題化した「摂理」(キリスト教福音宣教会)などの宗教団体と対峙してきた全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士のもとに、最近、ある大学の関係者から情報が寄せられた。

 イベントのテーマは「SDGs(持続可能な開発目標)」。テーマ自体は気候変動や環境保全と絡む大事な問題だが、大学側が怪しいと直感したのは、主催者の名称がイベント名を冠した「~実行委員会」とだけ書かれていた点だ。実在の団体名などは記されておらず、実行委員会のことを調べても、主催者の実態や事務所などの拠点があるのかがはっきりしなかった。

 渡辺弁護士が調べた結果、旧統一教会が絡んだイベントだと分かった。

 近年、旧統一教会や摂理が、こうしたSDGsに関する講演などのイベントを、正体を隠して開催するケースが目立っているという。

 スポーツ活動やゴスペルサークルなどに偽装した勧誘は昔から続く手口だが、時代の流れに合わせ「表の顔」を変えているようだ。

 渡辺弁護士が解説する。

「全国の大学がこうしたカルト宗教によるSDGs関連のイベントに頭を悩ませています。主催者について、『~実行委員会』などと正体を隠していること。また、信者の大学生が、その分野が専門の教授に『ぜひ先生のお話を』などと取り入って実際に登壇してもらうため、おかしなイベントだとは分からない。その先生は何も知らずに登壇してしまうので、むしろちゃんとした講演会だというお墨付きを与えてしまうのです。参加者の名簿をもとに勧誘につなげるのだと思います」

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