飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回、話を聞かせてくれたのは千葉県在住のペットシッター、河原時枝さん(57)です。結婚以来、複数の猫や犬と出会って暮らしてきましたが、13年前に保護したカイくんは、ケガで生涯にわたり介護が必要な子でした。カイくんとの生活を通して感じた、動物との縁や出会いの意味について、語ってもらいました。
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私の家には今、3匹の猫と1匹の犬がいます。3月まではカイという猫もいました。まだまだ一緒にと思っていたのに突然のお別れが来てしまい、何をしても落ち着かないなか、このコーナーに応募しました。カイのこと、聞いてもらえるでしょうか。
カイは下半身に障害がある「介護猫」でした。
出会ったのは13年前の初夏。場所は、以前勤めていた職場の敷地内です。野良猫をよく見かける場所で、私は不幸な子が増えないように同僚と雌猫たちの避妊手術をしていたのですが、同僚に呼ばれて見に行くと、どこかの母猫が「このコを頼む」と連れてきたのか、地面に生後2カ月ほどの子猫(カイ)が横たわっていました。
もうダメかなと思ったのですが、口がかすかに動いたので、私は「早退します!」といい、カイを箱に入れてかかりつけの動物病院に急ぎました。といっても、当時5匹の猫を飼っていたので、助かったら里親を探そうという気持ちでいたのですが。
カイの状態は思ったより深刻でした。
カイの背骨には、傘のようなものでつつかれた“穴”が開いていたんです。
その穴に虫が湧いていて洗浄してもらったのですが、脊髄(せきずい)の神経が損傷していて、獣医師の先生に「治療しても、後ろ足が伸びたまま歩けないかもしれない」と言われれました。そういう状態だと里親を見つけにくいし、自分で面倒を見なければ、と覚悟が決まりました。
その後、カイは歩けないだけでなく“自力で排尿できない”こともわかりました。生涯に渡って介護が必要なのです。「圧迫排尿のやり方を教えましょうか?」と先生にいわれ、私は「はい」と即答しました。