――若い世代と交流することで、自分自身をアップデートさせる。どんな仕事においても大切なことですね……。
そうかもしれないですね。今の音楽に関しては、娘たちに教えてもらうことも多いですね。藤井風さん、WONK、Kroiもそうですけど、「パパ、絶対、好きだと思うよ」と教えてくれて、「ホントだ!」と。海外のアーティストも「いいな」と思う人はたくさんいます。たとえばボビー・オローザさん。20代の若さでビンテージ・ソウルの旗手としてローライダーたちから絶大なる支持を得ていますが、昔のソウルを今の感覚で捉えて表現しているところがカッコいいなと。このボビー・オローサさんがそうであるように、ラジオを聴いていてピンときた楽曲が最新であろうと、古典であろうと、聴いた瞬間にフレッシュな感動を得たのなら、それは僕にとって新曲と同じことなんです。
――直感に従うことが好きなことをやり続ける秘訣なのかも。
そのときにやりたいこと、いちばん興奮できそうなことをやり続けてるだけですからね。「来年はこれをやりたいから、今はこうしよう」と予定を立てることができない(笑)。あとは、とにかく忙しくしてること。音楽以外にも車のレースとかいろんなことやってるんですけど、暇を作ると余計なことを考えて、落ち込んじゃいそうな気がするんですよ。間寛平さんの「わしゃ止まると死ぬんじゃ」というギャグと同じですね(笑)。
――確かに先のことを考えて不安になるよりも、今やりたいことを探したほうが建設的ですよね。勉強になります。
どうも(笑)。いま大変な状態でも、どんなことにも例外はあるし、自分をひとつのカテゴリーに当てはめないで上手いことやってほしいですね。諦めないってことは大事だと思いますが、逆に諦めることで自由になれることも。 逃げ道を作るのも処世術なので。
(森 朋之)
横山剣(クレイジーケンバンド)/1960年生まれ、神奈川県横浜市出身。小学校低学年の頃より脳内にメロディーが鳴り出し独学でピアノを弾き作曲を始める。小学校5年生(1971年)の時、中古レコード屋の野外サウンド・システムにてマイク片手に実演販売を行う。こうしたことがキッカケとなって音楽の世界にのめり込んで行く。中学2年よりバンド活動を開始して以来、地元横浜を中心に数多くのバンドで活躍するが、1981年にクールスRCのコンポーザー兼ヴォーカルとして晴れてデビュー。以後、ダックテイルズ、ZAZOU、CK’S等のバンドを経て、1997年春クレイジーケンバンドを結成。以降、2002年発売の「タイガー&ドラゴン」などヒット曲多数。今年、結成25周年をむかえ、通算22枚目のアルバム『樹影』を8月3日に発売した。