――8月にはニューアルバム『樹影』をリリース。このタイトルは、かつて本牧にあった喫茶店の名前だとか。
ええ。10代の頃なんですけど、東京の堀越高校から定時制の横浜市立港高校のに編入することになって。昼間は働かなくちゃと思ってガソリンスタンドに就職したんですけど、学校がはじまる時間と仕事が終わる時間がぜんぜん合わなくて、学校を諦めちゃったんですよ。そのガソリンスタンドの近くにあった喫茶店が「樹影」。昼休みにコーヒーを飲みながら、歌詞を書いたり、プロフィールを考えたり、自分で自分にインタビューしたり(笑)。中学生の頃から作曲家になりたくてデモテープをレコード会社に売り込みに行ったりしていたんですが、なかなか曲を使ってもらえなくて、「だったらシンガーソングライターになろうかな」と思い始めた頃ですね。
■年下の言うことは聞いたほうがいい
――アーティストとしての原点と重なっているんですね。今回のアルバムもCKBらしさが全開だし、しっかりアップデートされていて。このバランスはどうやって取っているんですか?
音色の磨き方とかミックスの具合とか、いろいろあるんですけどね。大事なのは、自分たちが興奮できるかどうか。無意識のうちに最近のトレンドも入ってると思うんですけど、それは暑くなると夏野菜が食べたくなると同じというか、体が欲してるんですよ。まずは何も考えずにやってみて、トゥーマッチだったら調整すればいいんじゃないかなと。音響的にメーターの針を振り切っていても、聴いた音が良ければそれでいいので。あとgurasanparkさんの力も大きいですね。
――gurasanparkさんは1989年生まれのクリエイター。ここ数年、CKBの作品にアレンジャー、作曲家として参加していますが、剣さんとは30才くらいの差がありますね。
親子ほど離れてますね。シルクソニック(ブルーノ・マーズ、アンダーソン・パークによるアメリカのR&Bデュオ)を聴いたときに、「アンダーソン・パークさんがブルーノ・マーズさんの個性を引き出している」と感じまして。gurasanparkくんは僕が好きなコード感やサウンドをよくわかってるし、CKBのいいところを引き出してくれるんです。若い頃から年上のアドバイスはぜんぜん聞かなかったんですけど(笑)、この年齢になって、年下の言うことなら聞いてもいいかもなと。老いては子に従え、ですね。