「イイネ!」のキメポーズ、<俺の話を聴け~>の「タイガー&ドラゴン」でおなじみのクレイジーケンバンド、横山剣さん。バンド結成25周年を迎えた剣さんに音楽観、仕事観、人生観など、独特の美学/ダンディズムについて語ってもらった。その根底にあるのは、過去や未来に捉われず、“今いちばん興奮できること”を追い求める姿勢だ。
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■30代後半でクレイジーケンバンドを結成
――クレイジーケンバンド(以下CKB)の結成は1997年。80年代からダックテイルズ、ZAZOU、CK‘Sなどのバンドで活動していた剣さんは、当時30代後半。「これが最後のバンドだ」という決意はありましたか?
じつはCKBは、初めて自分から「バンドやろうぜ」と言い出したバンドなんです。CKB以前にもいくつかバンドをやってたんですけど、終わるたびに「もう懲りごりだ」と思って、本来やりたかった作曲家に戻るということを繰り返してたんですよ。1997年もそういう時期だったんですが、知り合いから、(東京)福生の植木屋さんと静岡のアメ車の会社での営業ライブという仕事の依頼があったので、ミュージシャン仲間のたまり場だった本牧のイタリアンガーデンという店で「美味しい仕事があるんだけど、やらない?」って誘ったんです。そしたらその時の感触がよかったから、「このメンバーでバンドとして続けたいな」と思ったんですね。ちなみに僕がつけたバンド名は「ゲロッパ1600GT」。ギターの小野瀬雅生さんが「パッとしないから、やめません?」って言い出して(笑)、クレイジーケンバンドと命名してくれました。
――CKBはロックンロール、歌謡、R&Bからアジアの民族音楽まで、結成当初からジャンルレスな音楽性を志向していましたね。
もともと僕自身がそういう音楽の聴き方をしてたんです。1本のカセットテープに、アース・ウィンド&ファイアー、橋幸夫さん、最新のR&B、韓国のポンチャック(大衆音楽)が入ってるという(笑)。ウチの娘は23歳と19歳なんですけど、サブスクのプレイリストで同じような聴き方をしてるんですよね。洋楽も邦楽も関係なく聴いていて、昭和の曲にもけっこう詳しくて。去年出したカバーアルバム『好きなんだよ』で「モンロー・ウォーク」(南佳孝)をカバーしたんですけど、娘も好きだったみたいなんですよ。「パパ、何でその曲知ってるの?」って言われて、「何言ってんの、俺の若い頃のヒット曲だよ!」って(笑)。
――CKBの音楽の幅広さは、プレイリスト文化の先取りだったのかも。