近畿財務局職員だった赤木俊夫さん(雅子さん提供)
近畿財務局職員だった赤木俊夫さん(雅子さん提供)

 折しも、最近、『安倍晋三回顧録』(中央公論出版社)という本が出版された。安倍氏が生前に語ったことが書いてある。森友事件について見てみると、驚いたことに、反省の言葉は皆無。赤木さんへの謝罪も同情の言葉もない。そもそも赤木さんの名前すら出てこないのだ。極めつけは、「森友学園の国有地売却問題は、私の足を掬うための財務省の策略の可能性がゼロではない」という言葉。呆れてものも言えない。要するに、自分に責任はなく全ては財務省が悪いと責任転嫁し、赤木さんを死に追い込んだことを隠そうとする態度。

 雅子さんがどんなに傷つくだろうか。安倍氏は、「人の心を持たない人間だ」とつくづく思った。

 もし、赤木俊夫さんに手を合わせようとする官僚が今年も現れなかったとしたら、どう理解したら良いのか。この国は、今もなお「臆病で弱くて卑怯な」官僚達と「人の心を持たない元総理の『亡霊』」によって動かされているということなのだろうか。



週刊朝日  2023年3月17日号

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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