そして5月31日、嫌疑不十分で関係者は不起訴処分になった。五ノ井さんは追加の証拠を伴い、6月7日付で検察審査会に再審査を申し立て、現在その結果を待っている。
ヒアリングのあとの質疑応答では、ハラスメントの相談窓口が自衛隊にあるかを問われた。
五ノ井さんによると、入隊してすぐに受ける前期教育では専門家によるセクハラ・パワハラに関する教育があり、相談窓口もあることを知っていたという。
だが、五ノ井さんは、被害を相談しなかった。
「理由は、(相談しても)動きが遅いから機能しないということを、周囲から聞いていたので、被害にあった時に相談しようとは思いませんでした。自衛隊は上下関係の社会なので、下の階級は順序通りに、一つずつ上の階級に報告しなければなりません。階級を飛び越えて、上に相談すると、後から問い詰められます。結局、部隊の中で、一つ上の階級の人に言ったところで、揉み消されて終わってしまいます」(五ノ井さん)
ヒアリングを行った立憲民主党・長妻昭議員は、7月に2回、防衛省に対して厳正な調査を文書で要請していた。防衛省人事教育局服務管理官からの回答には、「本件につきましては、部隊において揉み消しを行っているなどの疑いも指摘されていることから、客観性・公正性を確保するため、当該部隊ではなく、その上級部隊において調査を行っています」とあった。
この回答について、長妻議員は言う。
「防衛省の文書に『揉み消し』と書いてある。これは非常に深刻だと思います。危惧されるのは、懲戒処分にもいろいろな段階があり、軽い懲戒処分を年明けくらいに出して、それでお茶を濁すこと。これは絶対にあってはならないと思います」
五ノ井さんの告白後、同様に被害にあっている自衛隊員からも声が上がってきていることを受け、長妻議員は「ここで、一気に全部の膿を出し、まっとうな組織に変える思いで取り組んでいきたい」と語気を強めた。弁護士を含めた第三者委員会による調査を行い、自衛隊内に蔓延るハラスメント被害の全容を明らかにしていくべきだと、訴えた。
外交防衛委員会の小西洋之議員は、防衛省に「性暴力委員会」を設置するなど、再発防止策について検討したいと話した。