小さな子どもも大人と同じように、口がにおうことがあります。しかし、大人のように歯周病が原因で口臭が起こるケースがあるのか、気になります。幼児や学童が歯周病になることは珍しくないのでしょうか? 小さな子どもの歯周病治療はどのようにおこなうのでしょうか? 歯周病専門医の若林健史歯科医師に聞いてみました。
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「小さい子どもは歯周病にならない」
このように思っている人は、まだ多いようです。
しかし、それは間違いです。
「子どもの口が臭い!」
と、親御さんがお子さんを連れて当院を受診される場合、歯周病が見つかることは珍しくありません。
厚生労働省の平成28年歯科疾患実態調査では、歯周病の兆候である「歯肉の出血」があった子どもは10~14歳で24.6%と、かなり多いです。
これより低い年齢については調査されていませんが、前述のように診療現場では小さいお子さんにも少なからず、歯周病が見られます。つまり、歯周病は「子どもから大人まで、すべての年齢に起こる病気」と考えてください。
歯周病の原因である歯周病菌は、家族の唾液や食事などを通して、子どもに感染します。このため乳歯であっても食べカスが残っている場所があれば、そこで歯周病菌が繁殖します。小さい子どもは大人と違って免疫力があるので、歯周ポケットができるような進行した歯周病にはなりにくいですが、初期の段階の歯肉炎はよく見られます。
歯周病で口臭が起こる原因はこの連載でも何度か取り上げている「メチルメルカプタン」です。口の中には500種類以上の細菌がすみついており、その多くは食べカスや舌の表面からはがれ落ちた上皮をエサにしています。
メチルメルカプタンは、これらのうち、たんぱく質をエサにする細菌がたんぱく質を分解する際に発生する揮発性硫黄化合物です。揮発性の物質は常温で気体になりやすく、息とともに放出されるので、周囲ににおうのです。