性機能障害による男性不妊も増加傾向にある。

「子どもを持ちたいのに、性交がうまくいかないという悩みを持った男性が多くいらっしゃいます」

 とは、男性不妊外来で、日頃から多くの男性患者と接している辻村晃医師(順天堂大学医学部附属浦安病院)だ。男性不妊外来には、冒頭のAさんのように妻との性交渉がうまくいかないことや、タイミング法のプレッシャーに悩む男性の声が多く聞かれるという。

 いわゆる“年齢の壁”が、女性だけではなく男性にも存在すると知られるようになったことも、男性の妊活への焦りを助長させているかもしれない。卵子の老化によって妊娠率が低下することは広く知られているが、最近、男性も加齢とともに元気な精子数が減少することが知られるようになった。晩婚化の影響により、結婚前にすでに精液所見が悪化している男性も増えているそうだ。辻村医師は言う。

「これから子どもを作ろうとしている人が受けるブライダルチェックを受診した男性の調査からも、精液量や精子数の減少、精子運動性の低下がそれぞれ約10%認められただけでなく、驚くべきことに1.8%で無精子症が認められました。さらに、妊活前の時点ですでに精液所見に何らかの問題が見られる男性が約25%認められました」

 辻村医師の男性不妊外来で特に目立つのが「膣内射精障害」だ。その名の通り、マスターベーションでは射精に至るが、性交渉の際に膣内では射精ができない症状だ。冒頭のAさんも同様の症状にあたる。辻村医師は言う。

「ここ10年で、男性の膣内射精障害がかなり増えていることを実感します。妊活中の男性からは、“妻に対してできない”という声や、タイミング法で性行為を義務付けられること、膣内で射精しないといけないということが大きなプレッシャーになり、追い詰められた状態になって不妊外来に駆け込んでくる人が少なくない」

 膣内射精障害による男性不妊の悩みを持って辻村医師の元を訪れるのは、20代後半~40代前半の男性。1年ほどタイミング法を試したものの妊娠しないことから、医療機関を受診する流れに至るケースが多いという。

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膣内射精障害の要因は?