不妊治療は、妊娠出産の当事者である女性が主体となるものの、その陰でパートナーである男性が悩みや葛藤を抱えるケースが少なくない。妻にも本音が言えぬ中、プレッシャーで追い詰められてしまう例もある。そうした中、妊活の大きなハードルにもなっているのが、ここ10年で増えている男性特有の“ある症状”。不妊治療の今を探る短期集中連載「不妊治療の孤独」第2回目は、誰にも悩みを打ち明けられない男性側の本音に迫る。
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東京都在住の会社員、Aさん(41)。2歳年下の妻と不妊治療に奮闘し始めて、5年になる。8年前、Aさんが33歳、妻が31歳の時に結婚。結婚して3年ほどが経ち、「そろそろ」と考えてタイミング法を試みるも、1年半経ってもなかなか妊娠しない。そこで夫婦ともに一通りの検査を受けたが、互いに「異常はない」と言われた。
「このままタイミング法をもう少し続けるか、次のステップである人工授精に進むか、どうしますか?」
医師からこう投げかけられ、夫婦はしばらく悩んだ。ともに「なるべく自然に授かりたい」という思いが強く、できることならタイミング法で授かりたい。だがその頃、タイミング法を試みても、Aさん側の問題から、性交渉がうまくいかないことが増えてきていた。
平日にAさんが仕事を終えて帰宅するのは、夜10時を過ぎることが多い。多忙な業務を抱え、終電で帰る日も月に4~5日はある。妻も仕事を持ち、フルタイムで働いているが、排卵日近辺の“タイミング”の日には、互いに「早めに帰ろう」と努める。
しかし、Aさんは仕事の都合で、どうしても遅くなる日が続いた。仕事から疲れて帰宅し、お酒を飲んでしばし休息したいところだが、妊活中の妻も禁酒を続けている手前、自分だけは飲みづらい。
「体調を整えるためにも、ちゃんと睡眠時間を取りたいから、早めにお願い」
と、妻に急かされて臨むも、もはや事務的な“作業”のように感じてしまう自分がいる。加えて「今日は外せない日」ということや「最後まで成功させなければ」という思いがプレッシャーになり、途中でうまくいかなくなることが続いた。