野手では内田湘大(利根商・一塁手)、内藤鵬(日本航空石川・三塁手)、イヒネ・イツア(誉・遊撃手)、西村瑠伊斗(京都外大西・外野手)と各ポジションに面白い選手が揃った。内田は投手としても最速149キロを誇る本格派で長打力を備えた大型内野手。チーム事情と投手としての負担を考えてファーストを守っていたが、脚力も素晴らしいものがあり、ほかのポジションを守れる可能性は高い。フォロースルーの大きいスイングは迫力十分で、貴重な右のスラッガー候補となるだろう。

 右のスラッガーという意味でナンバーワンとの呼び声も高いのが内藤だ。180cm、100kgの巨漢だが、スイングには重々しさが全くなく、スムーズに鋭く引っ張れるのが大きな長所。夏は厳しいマークにあって苦しんだが、それでもセンター左に特大の一発を放ちその力を見せつけた。サードの守備も年々レベルアップしており、将来の中軸候補として期待できる素材である。

 素材型と言える選手がイヒネだ。両親がナイジェリア出身ということもあって、その動きは明らかに他の選手とは違い、攻守ともに躍動感にあふれている。打撃の確実性は課題だが、この夏はその点でも大きな成長を見せた。プロでもショートで勝負できるかは意見が分かれそうだが、スケールの大きい内野手として楽しみな存在だ。

 好素材が揃う外野手でも打撃で圧倒的なパフォーマンスを見せたのが西村だ。この夏は6試合で11安打を放ち、そのうち8本が長打、4本がホームランという大活躍を見せた。かなり背で少し独特のスタイルだが、ヘッドの走りは抜群で、広角に長打を放つ。足と肩も兼ね備えており、外野手としての総合力も高い。

 どうしても甲子園に注目が集まるが、プロでも甲子園未出場でスターになった選手は少なくない。ここで紹介した以外にも楽しみな選手は多いだけに、ドラフトでは甲子園未出場組にもぜひ注目してもらいたい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。