飼い主さんの目線で猫の温かなストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。お話を聞かせてくれたのは東京都在住の主婦ユカさんです。元気な茶トラのトラくんが難病にかかり、3カ月の余命宣告。それから1年以上経った今夏、静かに旅立ちました。「どんな時も笑顔」と決めて寄り添ったユカさんに、どう覚悟をしたのか、何に励まされたのか、思いを伺いました。
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トラは一昨年秋ごろから、右前の足首をくるっと曲げるしぐさをしたり、昨年のお正月に腰が抜けたように床でおしっこをしたり。それがサインでしたが、その時に駆け込んだ動物病院では「関節炎か腰のヘルニアでは?」という診断で、痛み止めを出してもらいました。
その後も、手首を曲げていたので、かかりつけ医にいくと、「脳から足の症状が出ることもあるし、MRIで確定診断しましょう」と言われました。そして、獣医大までいったのです。そこまでの大ごととは思わず、安心を得るために調べることにしたのですが……。
昨年5月、脳腫瘍(髄膜種)が判明し、「余命3カ月」と宣告されました。
「誰の猫の話?」。MRIの画像を前に、私は茫然としました。
あと3カ月? トラはその時12歳になったばかり。うちには腎臓を患ってケアしている同世代の黒猫、クロがいるのですが、その子の方が先に逝き、トラはもしかしたら「20歳まで生きるかも?」という気がしていたのです。それがなぜ。
■私の答えは一択だった
「これからのことですが」と先生にいわれ、はっと我にかえりました。
先生に、治療方針を三つ提示されました。外科的切除、化学療法(抗がん剤)、放射線治療です。
でもトラの場合、手術は首の後ろから開ける難易度の高いもの(そのまま亡くなる可能性もある)。抗がん剤は効きにくい。放射線は入院して麻酔をかけて週に2、3回、それを1カ月。放射線には反応するかもしれないけど、麻酔をかけるたびに腎臓が悪くなるので、脳の症状より腎臓のダメージで亡くなるかもしれない……。