そういわれて、迷うことなく、先生にいいました。
「治療はしません」
答えは一択でした。猫にとっての1カ月は、人間の4カ月に該当するといわれます。そう考えると、トラはつらい治療をしてまで長生きしたいだろうか?と思ったのです。それなら住み慣れた自宅で、家族とクロとのんびり楽しく過ごした方がいいのではないか、と。
そして私は、トラをそのまま家に連れ帰りました。
猫は「死への恐怖というのはない」と聞いています。だから今を生きることを大事にして、トラに伴走し、不安ないようにサポートしていこうと決めたのです。
■応援の言葉に励まされる
うちでは、トラの前に、庭に現れた「初代トラ」という猫を飼っていたのですが、若くして白血病で亡くしています。
悲しみが癒えず、里親サイトで見初めたトラを迎えました。トラはボランティアさんが火事現場から救出した子です。その後、同じボランティアさんからクロを譲り受けたのですが、2匹に長生きしてほしくて、書物やセミナーで猫の勉強をしました。トラの病気が判明する前に、動物看護師に近い知識を得られる「キャットケアスペシャリスト」という資格も取りました。
「脳の病気は難しい」とトラを診た先生もおっしゃっていましたが、目が見えなくなったり、くるくる回ったりという典型的な症状が表れなかったので、私もまさかと思いました。それでも比較的早く冷静になれたのは、猫のことを学んでいたからかな、とも思うんです。
知人たちの応援も支えになりました。
私はSNSで茶トラ倶楽部というグループに入っていて、トラのことを告げると、30分以内に「頑張れ、頑張れ」とたくさんの応援のコメントが入り、「うちも病気の時に免疫を上げる栄養補助食品を飲んでいました」など情報を教わったりして、励まされうれしかったですね。
当のトラは「本当に病気?」と思うほど元気でいてくれて、余命の3カ月を過ぎても半年を過ぎても、ピンピンしていました。
クロのほうが、腎臓のための補液に手間がかかっていたし、実際に生活の中で、何度もトラが病気だということを忘れかけました。