次にデータの側面からジャッジと大谷の活躍を見てみる。まずは近年のタイトル争いで重視されているWARから。WARとは「平均以下で代替可能な選手と比べてどれだけ勝利を上積みしたか」を示す指標で、いわば貢献度を総合的に評価した数値だ(以下、ファングラフス版のfWARを参照)。
現地8月21日時点ではジャッジが野手では両リーグトップの7.5。大谷は打者として2.9、投手としては3.7で合計6.6。いずれもMVP級の数値ではあるが、ジャッジが僅差とは言えないリードを保っている。大谷が投打で勝利に貢献していると言っても、ジャッジは打者一本でそれを上回る破格の貢献をしていることが分かるだろう。WARにおける両者の差は、大谷が偉業や記録を達成するたびにツイッターで速報していたことで知られるMLB公式サイトのサラ・ラングス記者もジャッジ有利と認めるところだ。
さらにジャッジに追い風となる客観的なデータも存在する。それは今季のMLBがここ数年と比べるとリーグ全体のホームラン数が例年よりもかなり少ないことだ。大谷が46本塁打を放った昨季のア・リーグは全2430試合で総本塁打数は3059本だった。一方、今季は1807試合を消化した時点で1882本塁打。このペースで2430試合を終えると、総本塁打数は約2530本と前年比で500本近くも少ない計算となる。リーグ全体の防御率も昨季終了時の4.32に対して今季は現地8月21日時点で3.88と、投高打低が進んだシーズンになっている。
ジャッジはこうした傾向をものともせずにホームランを量産しているのだ。21日時点ですでに46本塁打。ア・リーグ2位のアルバレス(31本)に圧倒的な大差をつけている。唯一無二性を挙げるならば、ジャッジも十分に他者とは一線を画したバッティングを見せていると言えるだろう。
一方の大谷は昨季が打者としてfWAR5.1、投手としては3.0で合計8.1。今季のジャッジを上回る数値であり、MVP獲得も納得の結果だった。しかし今季は前述のように合計6.6と大きく落ち込んでいる。投手としての貢献度が上がった以上に打者としての貢献度が下がっているというデータ的な事実は見逃せない。