ひとつ屋根の下に同居していても、夫と妻で「見えている景色」が違うことは少なくない。夫がよかれと思ってやったことが、妻には耐えられないこともある。その逆もまたしかり。大阪府に住む小柴さん夫婦も、そんな「すれ違い」が重なって離婚危機にまで至った過去がある。夫と妻は、それぞれお互いの行動をどう感じていたのか。「前編」ではまず夫の“言い分”を聞いてみた。
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「妻の里英とはオンラインゲームで知り合いました。チャット機能で話していたら、実は彼氏とうまくいっていないんだ、などと打ち明けられたのがきっかけです。相談にのっているうち、親しくなっていきました」
大阪府に住む小柴孝雄さん(仮名・41歳)は結婚のなれ初めをこう話す。
孝雄さんはバツイチ。里英さんと出会った当時の孝雄さんは、元妻と性格の不一致で離婚し、戸籍上は独身だったが、元妻と子どもと同居していた。子どもの親権は元妻にあったが、子どもに関する重要事項は孝雄さんが決めるという約束のもと、あくまで子どもの父母として一緒に暮らしていた。当然、男女としての夫婦関係はなかった。
妻の里英さん(仮名)は、16歳年下の25歳。当時は東京で保育士をしていて、彼氏と同棲中だったという。里英さんは言う。
「(孝雄さんとは)年が離れているし、籍が抜けているとはいえ、一緒に暮らしている元妻と子どもがいる。はじめは恋愛感情などありませんでした」
それでも、里英さんはなかなか別れられない彼氏について孝雄さんに相談し続けた。孝雄さんは「いったん実家に帰ってみれば?」とアドバイスしたが、里英さんは「実家と折り合いが悪く、帰れない」と言う。
「聞いてみると、たしかに少々、複雑な家庭でした。両親が離婚し、父親と暮らしていたが、里英が就職で家を出てから若い女性と再婚した、と。家に戻りにくいという彼女の気持ちは理解できました。でも一方で、お父さんは、つらいときこそ頼ってほしいんじゃないかな、とも思いました。ぼくも父親ですから、そんな感想を述べながらアドバイスをしていたんです」(孝雄さん)