里英さんの父親とその妻は、無理やり寝室に押し入り、そこにいた里英さんに「行くぞ!」と声をかけた。当然、孝雄さんは「どういうことなのか」と問い詰めたが、里英さんは何も答えなかった。

 孝雄さんは里英さんが抱えている子どもの元へ向かったが、父親が孝雄さんの肩を強引につかみ、その妻も孝雄さんの進路を体を張り妨害したために、孝雄さんは壁に体をぶつけ、もみ合いになった。その隙に子どもを里英さんから取り返したが、父親の妻が、警察を呼んだ。孝雄さんも、警察を呼んだ。現場には2組の警察官が駆けつけた。

 子どもはいったん児童相談所に保護されたが、数日で帰ってきた。父親たちは里英さんと子どもを連れ帰ることを諦めた。

「なんで父親を呼んだの、どういうつもりだったの、と、里英に問いただしました。最初は何も知らないという姿勢だったのですが、児相に子どもを連れて行かれて、両親と関係が悪くなると逃げ道がないと思ったのか、ぺらぺらとよくしゃべりましたよ。要は、僕との仲がうまくいかないことを父親に相談しているうち、『それはDVだ、モラハラだ、こっちに帰ってこい』と言われ、だんだんその気になった、と」

 里英さんは、犯罪という言葉によほどショックを受けたのか、反省した様子だった。

「それ以降は文句を何も言わなくなりましたし、もめ事はまったく起きないです。今は家族3人、仲良く暮らしていますよ。来年には2人目が生まれる予定です」

(上條まゆみ)

後編では「妻の側」から孝雄さんとの結婚生活を語ってもらう。