スクランブルローラーでシュートする小泉(後ろ姿)
スクランブルローラーでシュートする小泉(後ろ姿)

「人気が出て、凄いな、と思っていました。小泉さんと最初にお会いしたときは、ラテン系の2世かな、と思いましたよ。それほど熱い人でした(笑)。スクランブルローラーはボールを使うことでわかりやすくスポーツ性が増していて、ショーをスポーツに、という小泉さんの気持ちが感じられました」

 翌年、新展開があった。まず、人気劇団の東京キッドブラザースが「オリーブの枝」という演目にローラースケートを取り入れたいと、指導と演出の協力を求めてきた。小泉は会社の仕事後に稽古場に通い、スクランブルの仲間にも手伝ってもらって、帰りに皆にご馳走した。

「オリーブの枝」は、斬新な舞台、と演劇界で評価され、続いて古谷一行主演で谷美由紀のデビュー作品だった角川映画「金田一耕助の冒険」への協力依頼がきた。大林宣彦監督から誘われたのだ。この映画の中で、古谷演じる金田一はローラースケート姿を披露。金田一を襲う集団として、スクランブルの仲間も出演機会を得た。

 さらに田中健と岡田奈々主演で8割がローラースケート・シーンという東映映画「暴力戦士」にも協力し、石坂浩二の劇団にも協力した。

 演出“される”側から“する”側に回った小泉は、その現場経験をどんどん重ねていった。

 同じ頃、タイガー森たちが、バンクも自分たちで作って大田区体育館でローラーゲームの復活興行を催した。それを小泉はスクランブルローラーの仲間と観に行き、仲間たちから「バンクで滑りたい」と言われた。

「僕もそうさせてやりたいと思ったし、同時に、やっぱり日米対抗だ、アメリカの選手を呼びたい、と思ったんです」

 小泉は、しばらくして森に、バンクを譲ってもらえないかと頼みに行った。実は小泉はその興行のとき「一緒に滑らないか」と誘われていたのに、スクランブルの活動を第一に考えて断っていた。そんな経緯があったので、なかなか森は首を縦に振らない。何度も頼み、ようやく100万円で譲ってもらえることになり、2人の兄から50万円ずつ借りてバンクを買うのだが、これがまた、新たな展開につながっていく。

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