「おい、スケート場に入れよ。お前、好きだったじゃないか。滑ろうぜ」
「俺は滑れるけど、コイツらはどうかな」
「いいから入れろ。滑ってみろ。教えてやろう」
スケート場に「入れ」と言うと皆、エンジンを切ったそうで、それを小泉は「かわいいでしょ」と言って笑う。
彼らは「ローラースケート、面白ぇ」と言って大騒ぎになったという。
「だろ。面白いから、皆、ココに来るんだよ」
そこで小泉は埼玉県から来た暴走族の話をして、
「お前たち、ココを守れよ」と言うと「守るよ!」。
「でも、喧嘩はするなよ、自分が傷付くんだから」
RITに通い、以来ずっと小泉を見続けてきた人たちに話を聞いた。
「僕は当時、東京都北区の高校1年生。友人に誘われてRITのローラーダンスコンテストを観に行ったのが最初で、以来、入りびたりになりました。
ローラーダンスの技術の教科書がなかった頃で、見て盗め、という感じでしたが、和気あいあいとしていた。小泉さんはインストラクターとしていつも現場にいて、DJをすることもあって、お客さんを楽しませるために色々なことをするんです。
たとえば『これから“メチャぶつけ”やりま~す』。ローラースケートを履いた状態のお客さん全員が対象で、柔らかいボールを投げつけ、キャッチできたらセーフ。当てられたらリンクから出る、というルールで、勝ち残るとフライドポテトチケットがもらえます、と。これは盛り上がった(笑)」(Yuuki・映像制作プロデューサー)
「小泉さんはお客さんにも厳しかった。中学生がリンクに居られるのは18時までで、それ以降もたむろしていると一発で出禁。それで『反省文を持ってこい』。それは“今後は規則正しく生活します”という一文を300回書いてこい、ってことで、筆跡が変わる(代筆)とダメ。ゴミ袋を渡して『空き缶を100個拾ってこい』ですよ。で、100個拾ってきたら『今日はいいぞ』(笑)」(村上仁。ムラサキスポーツ勤務)
「弱冠24歳で支配人としてやってきた彼は人を集めるために地域のバイク店の協賛でバイク10台が当たる抽選会とか、松茸ごはん食べ放題とか、様々な企画を次から次に考えていました。元有名人なのにお高くとまっているところがなく、損得抜きで相手に尽くす面倒見の良さで、愛があるんです」(RITを活動拠点としてスタートし、40年の付き合いになる志村ローラークラブの木下廣監督)
(文中敬称略。次号へ続く)
※週刊朝日 2023年3月10日号