安倍晋三元首相銃撃事件を機に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政界の癒着が次々と明るみに出ている。そもそも旧統一教会が話題に上ったのは1980年代。印鑑や壺(つぼ)などを高額な値段で売りつける「霊感商法」が社会問題となった。そのきっかけとなったのが1986年に「朝日ジャーナル」が始めた霊感商法追及キャンペーンだった。当時、問題視された旧統一教会による霊感商法とは、どのようなものだったのか――。ここでは、朝日ジャーナル1986年12月26日号に掲載された記事を紹介する。
※以下に記載された年齢、所属、肩書きなどは、すべて当時のまま
* * *
吸血鬼に取りつかれた犠牲者がバンパイヤーとなり他人の血を吸うようになる――西洋の伝説にすぎないが、霊感商法にはそんな不気味さがある。宗教者と称する小鬼たちは、他人の預金を吸い尽くしたあと、いま住んでいる家と土地とを狙い始める。資産家につきまとうその執念をみると、良心から遠くへだたった集団の姿が浮かびあがる。
【事例】
献金のため家を売るという姉を
弟らが法で阻む
神奈川県に住むCさん(45)らが、実の姉D子さん(54)に対する準禁治産宣告等の申し立てをしたのは12月10日である。
発端は、今年10月にD子さんから兄にかかって来た電話だった。「事情があって自分の土地と家を処分したい。あなた買ってくれない? 使い道はいえないけど、死んだ主人のためなの」。D子さんは昨年、夫を亡くしていた。子どもはない。住宅街の150平方メートル余の土地に建つ二階建ての家に1人で暮らしていた。その家、土地をすぐに処分したいという。
いぶかるCさんら兄弟に母が「そういえば、思いあたることが……」と話し始めた。母は9月下旬、D子さんに連れられて東京・代々木のビルに行ったという。「先生」と呼ばれる若い女性が出て来て、家系図を見ながら「おたくは男の子に縁がうすい。ご先祖の供義をすれば、子孫繁栄します」などといった。