やがて「お祈りに」と消え、戻ってくると「釈迦塔が440万、お壺が380万円です。どちらを授かりたいですか」と迫った。娘のため、と高いほうの塔を買った。
D子さんは、「私はもっと多く献金しているので、亡夫が霊界でとても喜んでいるの」などと上機嫌だった。
その後、母はD子さんに連れられ東京・三軒茶屋の「ビデオセンター」へも行ったことがある。のちにD子さんの家にも壺が二つ、それに『原理講論』という本があるのを見た。
一族が集まってD子さんの財産処分に異論を唱えたことがある。その2日後、母は突然三軒茶屋のビデオセンターへ呼び出され、男の「先生」に「何で娘の門出を邪魔するのか。日本、韓国などは手をつなぎ、共産圏に対抗しなければならない。もっと国際的になりなさい。娘さんに反対するとは何事だ!」と叱られた。
■「手をのべずには…」
D子さんが入信したのが、原理運動を展開する世界基督教統一神霊協会(統一教会)だと気がついた兄弟らは再度集まった。D子さんは「この前はいわなくてごめんなさい」と初めて、入信の事実を認めた。しかし「亡夫や、一族みんなの霊を救うためだ」と相変わらず異様なことを口にし、土地や家の売却の気持ちを変えようとしなかった。
誰かにせかされるようにD子さんがすでに町の不動産業者に依頼し、自宅売却の話を進めていることも前後して判明した。家、土地の売値は約9000万円という。「娘を思い、寝つけない夜が続いた」と、母はいう。
Cさんら一族は弁護士に相談し、準禁治産宣告と保佐人選任を求める家事審判の申し立て、さらにそれまでの間の保全処分の申し立てを決意した。
申し立ての要旨は、「本人(D子さん)はすでに印鑑や壺を次々に買い、さらに土地や建物を売却して代金を統一教会に『献金』しようとしている。このままでは全財産が同教会に献金、費消される恐れが強く、本人の老後の生活が困窮するのは明らかだ。本人は法律上の『浪費者』に当たり、緊急の阻止が必要」という内容だ――以上が、Cさんたちによる事の経過である。