現地では今回のエンゼルスの売却を報じる際に、すでに売却を進めているワシントン・ナショナルズが引き合いに出されることが多い。ナショナルズは今夏、若手のスター選手フアン・ソト(現サンディエゴ・パドレス)をトレードで放出している。スター選手がいないことは球団の価値を下げるように見えるが、年俸が上がることが確実な選手がいなければ、買い手の将来の負担を減らすことができるというメリットもある。

 モレノ氏は大谷を残して売却価格を上げようとしているが、これは浅はかな考えだという指摘されている。『ジ・アスレチック』には次のように述べられている。

「モレノ氏は、大谷がいることは買い手にとってより魅力的になると考えているのかもしれないが、その考えには議論の余地がある。たしかに大谷はユニークな資産だが、エンゼルスに25億ドル以上を投じる買い手のビジョンはそれよりもはるか先を見据えることだろう」

『ジ・アスレチック』はこうも続ける。「モレノ氏は球団売却のオファーを出す一方、保有権が来季までしかない大谷の処遇を含め、来季の給与体制を決めなければならない」

 エンゼルスは現在、マイク・トラウトとアンソニー・レンドンだけで年間約100億円を支払っている。そこに大谷が加われば年間150億円以上が必要になる。もし新オーナーが、本気で優勝を目指すとしたら、根本から戦力を変えなければいけないのだが、そのためにどれだけの費用がかかるか見当もつかない。

 一方、大谷をトレードに出せば将来の年俸問題が解決できるだけでなく、有望な若手選手の獲得もできる。(もっとも、オフよりも夏のトレード期間の方が若手選手を獲得できる可能性が高いため、エンゼルスはすでに多くのチャンスを失っている)いずれにしても、売却までに大谷の去就が決まれば、買い手もビジョンを描きやすくなるため、大谷が今回の売却の上で“キーパーソン”であることは間違いない。

 前出の『コール・トゥ・ザ・ペン』やエンゼルス元監督のマイク・ソーシア氏のように「大谷はエンゼルスに残留する」という意見は少なくない。しかし、現地では「“勝ちたい”と言っている大谷にも良いチャンスになるだろう」との意見もあり、トレード放出は決して悪いことばかりではないようだ。現地ではドジャース、メッツ、ヤンキースなどの強豪チームの参戦が早くも予想されている。

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