
幼稚園や保育園へ幼児を送迎する通園バスを巡っては、シートベルトの導入の必要性もかねて議論されてきた。交通事故総合分析センターによると、21年の「スクールバス」(幼稚園、保育園、小中学校など)の事故件数は56件。過去にも事故は散発的に発生しており、現場の一部からはシートベルトの設置を求める声が上がっていた。
ただ、道路交通法では、6歳未満の子どもはチャイルドシートを着用することが義務付けられている一方で、幼稚園バスにはシートベルトの設置義務がない。
13年、国土交通省は同省に設置された車両安全対策検討会がとりまとめた「幼児専用車の車両安全性向上のためのガイドライン」を発表した。だが、その中にもシートベルトの設置義務は盛り込まれなかった。
その理由として挙げられたのは以下の3点だ。
「幼児は自分でシートベルトを着脱できない可能性があり、火災などの緊急時の脱出が困難になる」
「3~6歳の園児は体格がさまざまで座席に一定のシートベルトは設置できない」
「同乗者(教諭や保育士)などの着脱補助作業が必要。緊急の脱出時にはその作業は難しい」
それに加え、そもそも幼児用のシートベルトが開発されていなかったという事情もある。そのためガイドラインには「幼児専用車に装備される幼児用座席に適した座席ベルトが存在しないことから、本ガイドラインの策定を機に、今後、幼児用座席に適した座席ベルトが開発されることを促す」と記され、メーカーに開発を促した。
その後、園児が自分で容易に着脱でき、体格差の問題もベルトの調節でクリアできるとする製品をメーカーが開発。既存の送迎バスの大半に設置できるという。
現在は、国交省と幼稚園関連団体、自動車関連団体の三者で通園バスへのシートベルト導入に向けた話し合いをしている最中だ。国交省の担当者はこう話す。
「幼稚園の関係者からはおおむね導入に前向きな意見が出ていますが、緊急時の着脱などを不安視する慎重な声もあります。また、乗降に時間がかかるため、立地的に車の通行の邪魔になってしまう点を不安に思われたり、コスト面でもかなりの負担が必要になるため、それを懸念する声もあります」