川崎幼稚園の通園バス
川崎幼稚園の通園バス
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静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で、3歳女児が通園バスに置き去りにされて死亡した。昨年7月には福岡の認可保育園で5歳男児のバス車内置き去り死亡事案が発生している。幼児を安全に運ぶべき送迎バスにもかかわらず、現場の安全管理のずさんさが際立つ。国は安全管理を徹底するように全国に通知を出したが、子どもの事故やケガ予防に取り組んできた団体は、「行政による現場への通知は有効ではなかった。置き去りを教えてくれるセンサーなど、子どもを守る仕組みを開発し導入する必要がある」と方針の転換を訴える。

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 7日に行われた園側の会見では、送迎バスを運転していた増田立義園長と乗っていた職員は、誰一人として幼児全員がバスから下りたかどうかを確認していなかったことが明らかになった。また、登園を管理するシステムの運用に問題があったことなど、新たな問題点も発覚した。

 昨年7月には、福岡県中間市で認可保育園に通う男児が送迎バスに取り残され死亡。この事案を受け、国は乗降車時の人数確認や、職員間の情報共有の徹底などを求める通知を出したが、教訓は生かされなかった。

 福岡県では2007年にも、北九州市で保育園の送迎車に取り残された2歳男児が熱中症で死亡している。なぜ、園児の送迎バスで同じ悲劇が繰り返されてしまうのか。

 子どもの事故やケガ予防に取り組むNPO法人「Safe Kids Japan」の理事長で小児科医の山中龍宏さんは危機感を募らせる。

「園長が昨年の福岡の園児死亡事案を知らなかったはずはありません。自分の園では事故は起きるはずがないと思い込んでいたのでしょう。同じ悲劇が繰り返されていることを考えると、行政の通知は全く役に立っていないことが分かります。行政は、人の力や理念に頼るのではなく、幼児が置きざりになっていることを通知してくれるセンサーなどの開発と導入に本格的に動くべきです」

 欧州における自動車の安全性評価機関「Euro NCAP」では23年から、子どもの置き去りを検知する機能を段階的に評価項目に加える。日本国内でも、置き去りを検知するセンサーの開発に注力したり、海外社製品の国内導入を目指して動いている企業もある。

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幼児用シートベルトの導入もなかなか進まず