西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)さん。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「ライフサイクルについて」。
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【人生の後半】ポイント
(1)心理学では青年期以降は衰退するだけと無視された
(2)東洋では老いや死までを含んで人生を考えている
(3)『論語』や「四住期」の考えでは人生の後半が重要
臨床心理学者、河合隼雄さんの『「老いる」とはどういうことか』(講談社+α文庫)を読み返してみました。以前にも巻末の対談について取り上げたことがあります(2021年12月17日号)。この本には老いを考える上でのヒントがいろいろ書かれています。
河合さんは私より8歳年上で、もう亡くなられていますが、生前にシンポジウムで同席したことがあります。話した内容はすっかり忘れましたが、河合さんの学者らしいおだやかな雰囲気はよく覚えています。
この本のなかで河合さんはライフサイクルについて語っています。心理学では人生を段階に分けて、乳幼児期、児童期、青年期などと呼んで研究しました。ところが青年期以降は、発達が止まって衰退するだけと無視されていたというのです。
私が日頃、主張している「人生の幸せは後半にあり」とは正反対の考え方ですね。さすがにこの人生のとらえ方は見直されるようになり、老いや死までを含んだライフサイクルが考えられるようになったといいます。
しかし、考えてみると、東洋にはそのような考えが以前からあったというのです。
その一つが『論語』です。「われ十有五にして学に志す」から始まって、三十にして、四十にして、と続き、最後は「七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず」で終わるのは、みなさんもご存知かと思います。