7月は62万人の外国人旅行者の受け入れ枠があったが、実際に訪れたのは14万4500人だった。
「1日2万人の上限にもぜんぜん達していないのに、それを9月7日から5万人に引き上げてもそれだけで外国人旅行者が増えるわけがない。個人客を制限したまま入国数の上限だけを引き上げてもはたして意味があるのか」
東教授は、そう指摘する。
世界で一番新規感染者が多い
コロナ前の訪日外国人観光客のうち約7割が個人旅行客だった。ビザなしの個人旅行を解禁しないことには外国人観光客が思うように増えないのは明らかだ。
「外国から新型コロナウイルスが持ち込まれる、と彼らをたたく人がいる。でも、外国人旅行者からすれば『日本は世界で一番新規感染者が多い国』という状況です(8月時点)。外国に向けて日本が安心安全な旅行環境にあることをアピールできなければ、ウェルカムとは言えないでしょう。ところが、そういう議論を聞いたことがありません」
一方、いまはホテルなど観光に関わる投資家にとっては非常に割安感のある時期、と東教授は言う。
「2年先くらいのインバウンド回復を見越して、富裕層向けのリゾートなどに投資しようとする外国人投資家にとって、円安メリットのある今は大きなチャンスと映るでしょう。自然環境の豊かな土地やコロナ禍で業績が悪化している宿泊施設の買収が進むかもしれません」
14日も一時1ドル145円の大台に近づくなど、まだまだ続きそうな円安。単純に「安い国」として終わらないためにも、メリットを享受できる施策が必要だ。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)