「国産のワクチンを開発して、日本における新型コロナウイルスとの闘いというのを大きく反転攻勢させていきたい」
などと前のめりな発言に終始し、森下氏の名前もあげて次から次へと「絶賛」した。
吉村知事が会見を重ねるとともに、アンジェスの株価は急上昇した。同年2月は500円程度だったのが、5月末には2000円台に。6月17日の会見の翌18日には、終値で過去最高の2324円をつけるまでになったのだ。
しかし、コロナの感染拡大の中で、森下氏と安倍氏や吉村知事の関係もクローズアップされはじめ、
ワクチン開発への「肩入れ」の背景に、政治的な思惑があるのではないかと懸念されはじめた。
アンジェスのワクチン開発も期待通りには進まず、大阪府が公表している資料「大阪府の連携協定機関における研究の進捗状況」でも、「臨床試験の接種開始」という程度の情報から、その後の新しいものがアップデートされない。
21年11月、同社は、十分な効果を得られず、最終段階の治験を断念すると発表し、改良ワクチンの開発に注力するとした。その後もアンジェスから「朗報」は届かず、今回の中止の発表となった。
アンジェスはその理由を、
「期待する水準には至らず、効果を上げることが難しいとの判断に至りました」
と説明している。
それでも大阪府は、「連携協定」について23年3月末まで延長している。
大阪府に聞くと、
「根本的には、コロナの感染拡大を止める治療薬、方法の確立というところでの協定です。コロナの感染拡大が継続しており、やめる理由はない、として続けています。今回はワクチン開発という一つの研究が中止になっただけで、協定を打ち切る理由にはならないと判断しています」
とのこと。
吉村知事は記者会見で、それまでの自身の発言などについてこう説明した。
「実際に研究した森下さんから聞いた話に基づいて発信をいたしました。その通りにいかないのは当然、あり得る。チャレンジがないと成功もありません」