政府が新型コロナウイルス対策として導入した接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の機能を停止することを発表した。感染者と接触した可能性があることを知るためのアプリだったが、政府が陽性者の全数把握を見直したため、役割を終える形だ。
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ココアは安倍政権下の2020年6月、約3億9千万円の予算を投じてつくられた。9月9日時点で4000万件以上のダウンロードがあったとされるが、目標であった6000万件には届かず。不具合も続出し、「失敗だった」という声も多い。
ココアの成否をどう見るか、課題はどこにあったのか。大手IT企業プロダクトマネージャーで、ココアの開発に携わった児玉哲彦氏に話を聞いた。
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――ココアとはどういったかかわりだったのでしょうか。
ココアは最初、エンジニアが有志で立ち上げたコミュニティで制作されていました。オープンソースソフトウェア(OSS)と呼ばれるもので、ソースコード(ソフトウェアの設計図)が公開され、誰でも改良、再配布などができる特徴があります。私はデザインを担当していました。
スマホのOSを提供するAppleとGoogleが共通の通信規格として、接触アプリの開発は「1国1アプリ」「保健当局の開発」に限定したため、厚労省が主導することになりました。
その後、開発はパーソル&プロセステクノロジー(東京都)に委託され、私たちが制作したOSSがココアのベースになることが決まりました。このタイミングで私たち開発者の関与はなくなりましたが、ココアに対する思い入れは強く、関心をもって見ていました。
――ココアは、日本の「デジタル敗戦の象徴」という指摘があります。どう見ていましたか。
ココアの前提にあったのは、6千万人のインストールです。スマホ利用者の60%を想定しての数字です。オックスフォード大から出されたシミュレーション結果で、これだけの利用者がいて、さらに陽性者がしっかりと登録していれば、感染を収束させることができるとされたためです。